私が日本企業の販売する製品しか買わない理由
2025.01.09
私のビジネス(アパレル)は主に日本製を中心として、生産管理調整を行っています。
一部海外製も手掛けますが、その製品においても、日本企業が原料から生産まで管理し、輸入する製品に限定しています。
現代の縫製レベルにおいて、日本製と海外製を比べるのは、あまり合理的ではありません。
かつては日本製の方が優れていた時代もありましたが、現在は日本人技術者が指導した縫製士が多く活躍し、製造機械の進歩もあって、アイテムによっては、むしろ海外の方が「上手い」商品も多くなりました。
それではなぜ、私が日本企業の販売する商品(EU・USAを除く海外製品以外)だけを購入するのでしょうか。
【原料・加工におけるリスク回避】
私はかつて中国生産の現場を数多く視察し、実際に生産管理を行ってまいりました。
その経験からでもありますが、まず化学薬品等に関する懸念があります。
アパレル製品の原料や加工工程には、多くの化学薬品が使用されています。
紡績、撚糸、染色、加工(顔料プリントなど)多くの工程で完成する、アパレル製品には人体に有害なものが使用される工程も含まれます。
日本企業が流通させる商品の場合、原料の管理から残留薬品まで検査している場合がほとんどで、この点について、安全な製品のみ流通していると考えて、ほぼ間違いないと思います。
しかし、海外直販サイトなどから購入した場合、だれも保証できないのが実情です。
特に海外から直接通販(個人輸入)される現代では、長期的身体への影響を考慮した、商品選びをするべきだと考えていました。
それが顕在化したのが、昨年から韓国で発表されたニュース情報で、目にされた方も多いかと思います。
【具体的なケース】
ケース1) 中国通販サイトで格安アクセサリー取り寄せたら…韓国で「安全基準超える」重金属検出(AFP 2024/4/10)
中国の大手テクノロジー「アリババグループ」が運営する海外向けの通販サイト「アリエクスプレス(AliExpress)」やショッピングプラットフォーム「テム(Temu)」で販売するアクセサリーから、韓国の安全基準値を超える重金属が検出された。
https://www.afpbb.com/articles/-/3514312
ケース2) 【韓国当局が発表】中国系通販サイトのアクセサリーから基準値大幅超のカドミウム(日テレ 2024/9/20 YouTube)
カドミウムが検出されたのは、中国系の大手通販サイト「SHEIN」「AliExpress」「Temu」で販売されている指輪やネックレスなどの金属製アクセサリーです。
韓国の環境省が、アクセサリー415点を調べたところ、49点でカドミウムが検出されました。
このうち、Temuで販売されていた指輪は、カドミウムの含有率が94.5%で、韓国の基準値の945倍だということです。
また、別のアクセサリーからは、最大で基準値の319倍の鉛が検出されたほか、これらのサイトで販売されている芳香剤からは、呼吸器への悪影響が指摘され、含有が禁止されている有害物質が検出されたということです。
中国系の通販サイトをめぐっては、これまでも「SHEIN」で販売されていた女性用の下着や浮輪などから、発がんリスクのある有害物質が確認されていました。
https://www.youtube.com/watch?v=fm7G4_25uvk(音がでます)
これらは報道されたニュースの一部です。
【製品検品体制】
例えば、私が良く知っている中国産地を例に挙げた場合、現地企業が製造し直接販売している商品について。
生地は市場で積み売りされているもので、出所がはっきりしないものもあります(一部の日本企業ではこのような生地を使用することもあります)。
また、染色加工やプリントにもどのようなものが使われているか、完全に管理されているとは言えません。
後加工で使用される顔料、染料、使用する薬剤などにも同じことが言えます。
縫製完了後においては、コンベア式検針機は通しているでしょうが、完成後に一度検査しているだけで、その後の異物の混入などについて、あまり考えられてないと思われます。
一方、日本企業が中国で生産する場合
管理された生地(日本から原料を輸出するケースが多く、現地生産する場合でも大手企業の管理下に置かれている場合が多い)を使用し、同じく管理された縫製工場に原料が流れます。
企業によっては、残留薬品などの検査を行う場合もあります。
また、縫製後においては、各所で検品作業が入ります。
縫製工場出る時、コンテナに積み込む前に現地の検品専門業者で、輸入後日本の検品業者で、プレス加工業者で、といった具合に複数の場所で、荷物に異物が混入する機会があるごとに、検品が行われます。
日本企業の考え方も様々ですが、このようなことから現在では人体に影響与えるような、異物混入はないものと考えられます。
また日本企業が販売する場合、日本の法律に従ったPL保険(生産物賠償責任保険)に加入している企業がほとんどですので、消費者が商品が原因で怪我や炎症をを起こしたという場合でも、十分な補償が期待できると考えて良いでしょう。
【衣類は食品と同じ人体に影響を与えるもの】
食品は、体に取り込むと言うことから、多くの人が生産会社や産地に、意識することが多いと思いますが、衣類も直接肌と触れ合う非常に重要なアイテムです。
生産過程や流通過程が不明瞭な食品は、口にしないが、衣類には無頓着という人も少なくないと思いますが、意識されることも必要ではないでしょうか。
私は実際に衣類で、短期的にトラブルにあったことはありませんが、一度コンビニのグラタンから貝殻のかけらのようなものが見つかったことがあります。
自分の歯と似ている物質ですのですが、欠けた部分が無かったので、製造会社(上場企業)に調査依頼したところ、すべての商品1点ずつ、X線写真が保管されており、更に商品1点には識別番号(シリアル番号のようなもの)が刻印されていました。
この照合において、製造時の混入はあり得ないという回答で、私も速やかに納得しました(なお、それが何だったのかはいまだに不明ですが)。
日本企業の衣類管理体制も、X線異物検査を行うケースはあり、個別の管理は食品に及ばないものの、一定水準の検査体制が整っていると言えます。
短期的にはけがや炎症、長期的には病気のリスクなどを考えた場合、それでも「目先のコスパ」に魅かれて、賭けのような買い物をすべきか否か?
日本の化学物質に対する基準は、アメリカやEUに比べると若干甘い面はありますが、それでも口にするもの、肌に触れるもの、要は人体に直接影響を与えるものに関して、日本企業が製造販売する商品は、充分に管理された状態であることを、もう一度考えてみてはいかがでしょうか。
Takeshi Yomo