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日本人職人を世界の一流に


2024.04.25

地味?きつい?儲からない?

繊維製品の加工や縫製現場には、なんとなくそんなイメージがあるかもしれません。
そんな現場にどうすれば若い人(職人や職人希望者)が集まるのか。
縫製現場を中心に、少し個人的な考えを書いてみます。
なお、あくまでも個人の見識の範囲におけるものですが、今回はお叱りを受ける内容を含むかもしれませんことを、あらかじめご了承ください。

【縫製工場は〇Kの現場】

かつて多用された3Kという言葉。
「きつい・汚い・危険」という職場環境を意味し、ブルーカラーの職業の現場の多くが、3Kでなくとも1Kや2Kだったかもしれません。

現代の縫製工場はどうでしょうか?

きつい? ← 随分改善されたはずです
汚い?  ← 埃っぽさは確かにありますが不衛生さを感じることは少ないと思います
危険?  ← バンドナイフ裁断など一部の業務にはやはり危険は伴いますが、CAMや自動ミシンの導入で、大きな危険は回避  される方向にあります

私が考えるに、かつての縫製現場にあった「ネガティブ」の多くは既に改善されているか、
改善されつつあると考えられます。

それでも、人材確保(特に新卒)に苦悩されている現場は、少なくないと思います。

【労働環境】

先の3Kからの脱却は出来ているかもしれませんが、事業の内容から、どうしても地味でやや乱れた環境になる傾向があります。
生地や資材が積み上げられていたり、もしかしたら足の踏み場も無いような現場があるかもしれません。

繊維(壊れるものや腐るものではないので)は、多少乱雑に扱っても問題ないことが、影響するのかもしれません。

【地味な印象】

室内灯の下で、黙々とミシンに向かって、プレス台に向かって作業をすることは、どうしても華やかさに欠けます。

太陽光は繊維の日焼けの原因になる可能性がありますし、目で追いながら手を動かすという集中した作業に、「談笑をしながら」というのは、なかなか難しいものがあります。

また元々、コミュニケーションが苦手な方の中に、縫製を得意とする方が少なくないことを、かつて大手の縫製工場経営者から聞いたことがあります。

【報酬】

これは印象の問題かもしれませんが、やはり他の産業と比べて、決して高収入であるとは言えないでしょう。

成果主義を採用している現場も、固定給の現場もあるでしょうが、被雇用者の職人であれば、突出した収入を得るのはなかなか難しく、みなし残業込みではあるものの、「新卒初任給35万円」(私の知人の実例)水準を実践できている工場は、極めて少ないのではないでしょうか。

また業績を反映させた、賞与システムを導入している現場も、まだそう多くはないと思います。

これらは仕事の性格的に、なかなか難しい問題です。

【休暇や福利厚生など】

生涯をかけて長く働ける環境であるか、産休や有休はとりやすいか、そもそもそ労働基準法に従って整備されているでしょうか。

経営者の方には厳しい意見かもしれませんが、実はこの点が最も縫製産業で整備が遅れている点ではないかと、私は個人的に考えています。

経営とのバランスの問題にはなりますが、雇用者と被雇用者の権利と義務を、しっかり果たせる環境を、今の若者は求めています。

【理想の労働環境(の例)を画いてみる】

労働集約型産業である為、制約はあるものの、こんな環境だったら応募が殺到しそう?な環境の一例を、文章化してみます。

・就業場所
GAFAのような清潔感とお洒落感満載の立地と建物
・業務内容
アパレル製品の縫製及び付帯業務
・勤務時間
AM9:00~PM6:00(休憩1時間)
残業あり
・休日
完全週休二日制
GW・夏季・冬季休暇あり
年間休日120日以上
有給休暇
・賃金
高卒初任給月額25万円
昇給年1回 賞与(年2回 昨年実績3ヶ月)
通勤手当全額(但し上限3万円/月)
残業手当
・福利厚生
社保険完備・社内研修制度・資格取得支援
・加入保険
雇用保険・労災保険・厚生年金保険・健康保険
・その他
小音量で音楽が流れる職場
空気清浄設備の充実
勉強会の実施

理想的な工場の「画」(一例)ではないでしょうか?

【現実は…】

先の項はネタ的に見えるかもしれませんが実は、「就業場所」と「賃金」以外は、非現実とも言えない内容を画いたつもりです。
多くの正社員を目指す未来の職人候補生は、このような現代に生きています。

当然、

「ばかばかしい」
「こんなことをやったら会社がつぶれる」
「お前がやってみろ!」

などという意見はあると思います。

しかし今は1960年~1990年代ではありません。
既に世界には、いや日本にもこの条件に近い縫製工場が存在するかもしれません。

急速に進む少子高齢化社会の中で、「日本製」のアパレル製品を作る現場の縫製士(職人)を守れなければ、日本の縫製産業は終焉に向けた一方通行になることでしょう。

業界総出で改革を始めなければ、業界そのものに人がいなくなるということも、考えなければならない時代になっていると思います。

他産業と比べて見劣りしない、魅力的な労働環境を作れるかが、日本人の縫製技術を、世界の一流として未来に残せるか否かの、分水嶺になると考えています。

Takeshi Yomo