起業における小ロット問題を克服
2023.02.07
「ヨモやま話」…今回はスタートアップ(起業)アパレルと生産現場の関係についてのお話です。
【みんな最初は小ロット】
アパレルブランドを立ち上げた場合、最初に生産できる1型あたりの数量はどれくらいになるでしょうか?
一部のハンドメイド作家さん等を省き、事業としてスタートした場合でも、1型10点程度から30点程度ではないでしょうか?
50点も生産依頼できれば上々だと感じます。
いきなり100点作っても、販売先がなければ当然在庫の山になります。
当面は展示会などの「受注分+α」程度の数量が適正ではないでしょうか。
【経済ロットから考える】
縫製工場には経済ロットと言われる生産ロットがあります。
経済ロットの考え方には、各工場の考え方があり、一概に正解が存在しないと思いますが、例として「工賃総額」から計算する場合があります。
A工場が平均的に受注している内容
300点*5000円=150万円(生産期間15日として)
100000円/1日
の売り上げとなります。
上の前提が相談者(依頼者)の頭の中に入っていなければなりません。
A工場に30点の依頼をする場合
30点*〇円=△万円(生産期間□日として)
◇円/1日
〇△□◇を考慮せず、自己都合だけの希望工賃を相談し続けても、なかなか取引開始は難しいものとなります。
完璧に1日あたりの売り上げを同じにすることは困難でしょうが、少しでも歩み寄れる計画性が必要になるのが、自由経済社会の当然の姿です。
「倍の工賃ならやってくれるだろう!」と仮に計算してみると
30点*10000円=30万円(生産期間6日として)
50000円/1日
となり、A工場にとっては十分な加工賃とは言えません。
逆算すればわかりますが
100000円/1日
30点*20000円=60万円(生産期間6日として)
そう、加工賃を20000円と覚悟する必要があります。
【乖離を埋めるものは存在する】
先の計算では全くもってブランドの立ち上げなど不可能に感じてしまいますが、縫製産業の経営者は目先の数字だけで判断する、ドライな人ばかりではありません。
人情味にあふれる人も大勢います。
ただし人情だけでは長続きしないのも現実です。
ブランドが育つ数年間、継続的に生産し続けるには何が必要でしょうか?
加工賃を抑えながら小ロット生産を継続し、工場もフリヤも巻き込んで「一緒にやってみよう!」と思わせるものが必要です。
C3-NETの場合、起業における小ロット依頼の際、具体的にお伺いするのは
・事業計画
・熱意
この2点(だけ)です。
それをC3-NETなりに翻訳して、工場経営者を説得し、ブランド立ち上げ期の、小ロット生産への協力をお願いしています。
【事業計画書は起業家の通行手形】
C3-NETには数多くの起業案件のお問い合わせを頂いています。
しかしながら電話でのヒアリング段階で、事業計画を作成されていない方が8割近くいるのが実情です。
事業計画がないので、当然キャッシュフローを理解しておらず、資金調達手段もあやふやです。
手元に貯めた資金で「なんとなく」という方も少なくないのですが、それでは早晩資金ショートを起してしまうことは、火を見るよりも明らかです。
また営業面ばかりに気を取られて、売れたは良いが作れないという方を何人も見てきました。
アパレル起業(アパレル業界だけではありませんが)をお考えの方は、事業計画書を綿密に書き上げて頂きたいと思います。
そのことによって資金繰りが見通せるだけでなく、スタートアップの小ロット生産協力社(者)獲得への近道にもなります。
御社の3年後、5年後の姿をお客様、工場、金融機関に認識させ、同時に自分自身も理解することが重要なのです。
そこに「熱意」が加われば先に計算した通り、通常工賃5000円を20000円とは言わず、当面10000円程度で協力してくれる、工場やフリヤを見つけられる可能性は、格段に上がるはずです。
C3-NETはそういう熱い相談をいつでもお待ちしています。
ヨモ タケシ
【追記…令和の事情】
実は10年以上前までは、今よりも小ロット生産は容易だったかもしれません。
・内職さんや家内工業での縫製対応が今より多かった
・海外に多くの生産が流れ、国内縫製工場が買い手市場に近かった
・国内工場の経営者や従業員の高齢化により閉業や廃業が増加した
このような要因で現在小ロット対応できる環境が、以前より厳しくなっているのが実情です。
変化に合わせて依頼する側、される側は今できる最善を尽くし、未来のブランドを一緒に育てられればと強く思っています。